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数値限定発明;判例検討(1)

2012.10.03

>数値限定発明の第2弾として、一つの判例を題材として検討してみたいと思います。話の流れの都合上、前回と重複する部分もありますが、その点はご了承ください。
 また、この題材は、発明の主題が目標値(result to be achieved)を含んでいる(というよりも目標値そのものである)、という点でもいろいろと示唆を含んだものとなっていると思います。この点についても私見を述べたいと思います。  [文責 弁理士/技術士 葛谷(くずや)]

 数値限定発明には種々論点があり、これまでも様々な論説が多く発表されています。本項では、数値限定発明における実際上の留意点について、さらに、1つの判例を題材として、数値限定の落とし穴とそれをどのように防ぐかについて私見を述べたいと思います。なお、わかり易さを優先するため、知財関係でのいわゆる業界用語ではなく、一般的な用語を使用する場合もあります。また、「先願主義」が論点では無いので、「先に発明した者が先に特許出願する」ことを前提に話を進めていきます。

1.数値限定発明とは
 数値限定発明が、特許として認められるための基本として押さえておかなければならないことは、審査基準に記載されている判断基準ですが、その基準についてどんな注意が必要なのかを考えて見たいと思います。

1-1.審査基準
 数値限定発明について審査基準から抜粋すると、「発明を特定するための事項を、数値範囲により数量的に表現した、いわゆる数値限定の発明については、(ⅰ)実験的に数値範囲を最適化又は好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮であって、通常はここに進歩性はないものと考えられる。しかし、(ⅱ)請求項に係る発明が、限定された数値の範囲内で、刊行物に記載されていない有利な効果であって、刊行物に記載された発明が有する効果とは異質なもの、又は同質であるが際だって優れた効果を有し、これらが技術水準から当業者が予測できたものでないときは、進歩性を有する。なお、有利な効果の顕著性は、数値範囲内のすべての部分で満たされる必要がある。(下線筆者)」と記載されています。

 しかし、普通の技術者の感覚としては、この判断基準は何かしっくりこないところがあります。なぜなら、1つ、せいぜい2つの要因の数値範囲のみが異なり、主要な構造や組成等その他の構成要素がほとんど同じで、その最もおいしい範囲がぽっかり残っているということは考えがたいことだからです。 

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