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数値限定発明;判例検討(3)

2012.10.19

>判例検討(2)からのつづき。[文責 弁理士/技術士 葛谷(くずや)]

1-3.実際上の留意点での弁理士の役割

 この証明で留意する点が、最後の下線で示した「有利な効果の顕著性は、数値範囲内のすべての部分で満たされる必要がある。」という点です。これは非常に重要な留意点なのですが、これが不備な明細書が非常に多いのが現状です。すなわち、「権利範囲内のほんの一部しかデータがない」、「境界を証明する境界の内外のデータがない(例:比較例としては、範囲を大きく外れる箇所の一つのデータしかない)」というケースが往々にしてあります。なぜかといえば、発明者が発明品を開発するために実際に検討した範囲と、特許で権利を主張する範囲が一致していないことが多いからです。できるだけ広い権利範囲を確保しようとするがゆえに起きる現象です。

 さらに、特許を出願するころには、すでに次の研究に関心が向いている発明者にとって、特許補完のためのデータ取得は非常に厄介なものです。このとき、「境界を証明するデータをそろえてほしい」と発明者に丸投げすると、発明をよく理解しているがゆえに「膨大なデータ取得が必要」と感じ、結局、補完データが取得されないまま特許出願ということになってしまうものと思われます。

 特許では詳細なデータまで要求されている訳では無いので、この段階では、弁理士が、「こことここのデータがほしい」とリードすることで、最小限のスタミナで審査基準の要求をクリアできます。この点は、発明者の方も、自分の特許を適切に保護するためですので、面倒くさがらずに弁理士に協力していただきたいと思います。 

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